Vol.076事業撤退

delyがクラシルで示したピボットの本質―撤退を成長に変える決断

2026年9月8日
4 min read
#dely#事業撤退#事業転換

運営:株式会社BELLET · 更新日:

EXIT
Letters by BELLET

「撤退」と聞くと、どこか後ろめたさを感じる方も多いのではないでしょうか。特に日本のビジネス文化においては、一度始めたことを途中でやめることは「失敗」や「諦め」と受け取られがちです。しかし、スタートアップや新規事業の世界では、撤退やピボット(事業の方向転換)は決して珍しいことではなく、むしろ成功へのプロセスに不可欠…

はじめに——「撤退」という言葉が持つ重さ

「撤退」と聞くと、どこか後ろめたさを感じる方も多いのではないでしょうか。特に日本のビジネス文化においては、一度始めたことを途中でやめることは「失敗」や「諦め」と受け取られがちです。しかし、スタートアップや新規事業の世界では、撤退やピボット(事業の方向転換)は決して珍しいことではなく、むしろ成功へのプロセスに不可欠な判断であることが多いのです。
今回は、フードデリバリー事業から日本最大級のレシピ動画サービス「クラシル」へと華麗なピボットを遂げたdely株式会社の事例を通じて、事業転換の意思決定について一緒に考えてみたいと思います。
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1. 事例を見てみよう——delyの軌跡

delyは2014年、慶応義塾大学SFCの堀江裕介氏によって創業されました。当初の事業はその社名が示す通り、フードデリバリー(食事宅配)サービスでした。Uber Eatsが日本に上陸する以前から、「出前をもっと便利に」というビジョンのもと事業を展開していたのです。
しかし、ビジネスは思うように伸びませんでした。デリバリー事業はオペレーションが複雑で、収益化までの道のりが険しい。資金も人手も限られているスタートアップには、なかなか難しい戦場でした。
そこでdelyは思い切った決断をします。デリバリー事業を畳み、次にWebメディア事業へとシフト。しかしそれも長くは続かず、また方向を変えることになります。2016年、ついにたどり着いたのが、料理レシピ動画プラットフォーム「クラシル」でした。
創業から2年の間に、数え切れないほどのピボットと撤退を繰り返した末の選択です。クラシルはその後急成長を遂げ、4,100万ダウンロードを突破。ヤフー(現LINEヤフー)グループ入りを果たし、3期連続で10億円超の黒字を記録するまでに至りました。
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2. なぜ撤退・転換に至ったのか

delyのケースで注目したいのは、「なぜ撤退したのか」という問いへの答えの鮮明さです。
フードデリバリー事業の失敗には、複合的な要因がありました。まずは市場のタイミング。日本の出前文化はすでに存在していましたが、スマートフォンを使ったオンデマンドデリバリーへの需要が本格化するには、まだ少し早かったのです。数年後にUber Eatsが市場を開拓したことを思えば、方向性自体は間違っていませんでした。
次にリソースの問題。デリバリー事業はレストランとの契約、配達員の確保、物流オペレーションなど、スタートアップには荷が重い要素が多すぎました。少人数チームで回せるビジネスではなかったのです。
そして競合の壁。大手プレイヤーが参入してきた際に、スタートアップが正面から戦えるリソースはありませんでした。
これらの要因が重なった時、創業チームは「このまま続けることが本当に会社のためになるのか」と自問したはずです。答えは「否」でした。そしてその判断は、後から見れば正しかったと言えます。
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3. どうすれば早く気づけたか

もちろん、後知恵で語るのは簡単です。しかし、いくつかのシグナルは事前に存在していたはずです。
ユニットエコノミクスの悪化は、最も分かりやすい警告サインです。1件のデリバリーで得られる収益と、そのためにかかるコストのバランスが崩れていれば、スケールすればするほど赤字が膨らみます。この数字を早期に直視できていれば、転換の決断はもう少し早かったかもしれません。
PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の手応えも重要なシグナルです。ユーザーが「これがないと困る」と感じるほど熱狂しているか。リテンション率は上がっているか。口コミで自然に広がっているか。これらの問いへの答えが曖昧なままスケールを急ぐのは危険です。
また、チームの熱量も見逃せません。創業メンバーが「この事業を本当にやり続けたいか」という問いに迷いなく答えられなくなったとき、それは大きなシグナルです。
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4. 撤退を「戦略」として捉えるために

delyの事例から学べる最大の教訓は、撤退の速さと次への転換の潔さです。
多くの企業が撤退を遅らせてしまう理由のひとつに、「サンクコスト(埋没費用)」の呪縛があります。「ここまでお金と時間を使ってきたのに」という気持ちが、冷静な判断を曇らせてしまうのです。しかし、過去に使ったコストは、未来の意思決定とは切り離して考える必要があります。
サイバーエージェントのように「4ヶ月でKPIを達成できなければ撤退」という明確な基準を事前に設けておくことは、この呪縛から解放される有効な方法です。感情ではなく、数字とルールで判断できる仕組みを作っておくことが、組織を守ります。
また、2026年5月に経済産業省が「スタートアップM&Aガイダンス」を公開したことも注目に値します。事業を「たたむ」だけでなく、「誰かに託す」という選択肢——事業売却やM&A——が、スタートアップの出口戦略として急速に広まっています。日本では2024年のスタートアップ買収件数が前年比22%増の350件と過去最高を更新しており、「撤退」の形も多様化しているのです。
自分たちが育てた事業を、より大きなリソースを持つ会社に引き継いでもらう。それもまた、立派な「戦略的判断」です。
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おわりに——次の挑戦へつなぐために

delyの堀江氏は、この時期を振り返って「撤退、ピボット、方針転換を躊躇せず、とにかく素早く意思決定してトライアンドエラーを繰り返した」と語っています。
失敗を恐れて何もしないことよりも、挑戦して学び、素早く軌道修正することのほうが、はるかに大きな価値を生みます。撤退は終わりではなく、次の挑戦への助走です。
事業をやめることは、夢をあきらめることではありません。より良い形で夢を追いかけるための、勇気ある選択なのです。
今、新規事業の行方に悩んでいる方がいれば、ぜひdelyの軌跡を思い出してみてください。あなたの「ピボット」が、次の大きな成功への扉を開くかもしれません。
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参考:dely株式会社の創業ストーリー、クラシル公式情報、経済産業省「スタートアップM&Aガイダンス」(2026年5月)

※ 投資・法務・税務の具体的な判断については、必ず専門家にご相談ください。 株式会社BELLETは、本コンテンツの利用によって生じたいかなる損害についても責任を負いません。

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