Vol.148事業撤退

三菱電機「8000億円の事業仕分け」|撤退を成長投資に変える方法

2026年9月8日
4 min read
#事業撤退#選択と集中#三菱電機

運営:株式会社BELLET · 更新日:

EXIT
Letters by BELLET

三菱電機をめぐる事業の見直しを題材に、「やめる」という決断は、決して後ろ向きなものではありません。むしろ、次の一歩を踏み出すための、いちばん勇。撤退・売却の背景と経営資源の再配分を整理し、変化の兆しを捉えて次の成長へつなげる視点を考えます。

> 「やめる」という決断は、決して後ろ向きなものではありません。むしろ、次の一歩を踏み出すための、いちばん勇気のいる前進かもしれません。今回は、最近のニュースを手がかりに、事業の方向転換や撤退について、少し肩の力を抜いて一緒に考えてみたいと思います。

1. まずは、最近の事例をのぞいてみる

2025年、日本を代表する電機メーカーである三菱電機が、大きな決断を発表しました。売上高にして約8,000億円規模の事業について、「このまま続けるのか、それとも撤退するのか」を2025年度中に見極める、というものです。
対象になったのは、主に自動車機器事業やFA(ファクトリーオートメーション)システム事業など。実はFAシステム事業は、2025年3月期の営業利益率が6.4%と前年から約5ポイントも悪化し、自動車機器事業も3.9%と、収益性に課題を抱えていました。同社はそれ以前にも、カーマルチメディアなど5,000億円規模の不採算事業からの撤退をすでに決めており、今回はそれに続く「第二弾」とも言える動きです。
同じころ、京セラも2026年3月期までに2,000億円規模の不採算事業を売却する方針を打ち出しました。背景には、東京証券取引所による「資本効率を高めよ」という強い要請もあり、2025年に上場廃止となる企業は124社と、2年連続で過去最多の見通しです。いま日本企業全体で、「あれもこれも」から「本当に強い事業へ」と、経営資源を集中させる大きな波が起きているのです。

2. なぜ、撤退や転換に至るのか

ではなぜ、これほどの規模の事業を見直すことになるのでしょうか。
三菱電機のケースで言えば、ひとつは市場環境の変化です。たとえば電動車(EV)関連は、かつて「これからの成長分野」と期待されていましたが、世界的にEVの成長スピードが想定より鈍ってきました。同社はエンジン車向けでは「残存者利益」(最後まで残った企業が得られる利益)を狙いつつ、EV関連には慎重な投資判断へと舵を切っています。
もうひとつは選択と集中という内部要因です。三菱電機は今後3年で約1兆円をかけたM&A(買収)も計画しています。つまり、伸び悩む事業から手を引いて生まれた余力を、AIやデジタルといった次の成長領域へ振り向ける——いわば「庭の手入れ」をしているのです。枯れかけた枝を切るのは、残った木をより大きく育てるため。撤退と投資は、実は表裏一体なのですね。

3. では、どうすればよかったのか

ここで少し立ち止まって考えてみたいのが、「もっと早く気づけるサインはなかったか」という点です。
収益性の悪化は、ある日突然訪れるものではありません。利益率がじわじわ下がる、競合に価格で押される、顧客の関心が別の製品へ移っていく——こうした小さなシグナルは、たいてい数年前から表れています。大企業ほど、過去の成功体験や組織の大きさゆえに、こうした変化への対応が遅れがちです。早めに「ここは潮時かもしれない」と判断できれば、傷も浅く、人材や資金をより良い形で次へ回せたかもしれません。
もちろん、撤退だけが答えではありません。事業の「軸足」を残したまま方向転換するピボットという道もあります。たとえばミクシィは、衰退していったSNS事業から、スマホゲーム『モンスターストライク』へと鮮やかにピボットし、息を吹き返しました。国内スタートアップの10Xも、消費者向けの献立アプリから、小売企業向けのネットスーパー構築システムへと事業を大きく転換させ、成功をつかんでいます。世界に目を向ければ、SlackもTwitterもYouTubeも、最初の事業からのピボットで生まれたサービスです。「全部やめる」のか「軸を残して変える」のか——その見極めこそが、経営の腕の見せどころと言えるでしょう。

4. これからの道筋と、ちょっとした教訓

最後に、こうした事例から私たちが受け取れる学びを整理してみます。
いちばん大切なのは、「撤退は恥ではなく、戦略的な判断である」という視点を持つことだと思います。やめることを「失敗」と捉えてしまうと、判断はどうしても遅れます。けれど実際には、引き際を見定める力は、新しく始める力と同じくらい——いえ、それ以上に貴重な経営能力です。三菱電機の決断も、見方を変えれば「次の1兆円の挑戦のための地ならし」なのです。
そのために大切にしたいのが、撤退の「基準」をあらかじめ決めておくこと。「3年で黒字化しなければ見直す」といった物差しを最初に持っておけば、いざというときに感情に流されず、冷静に判断できます。そして撤退で生まれた人・モノ・お金を、しっかり次の挑戦へつなげていく。終わりを、ちゃんと次の始まりに変えていく。
挑戦には、うまくいかないことが必ずついてきます。でも、立ち止まって方向を変えることも、潔く手放すことも、決して後退ではありません。それは、また新しい一歩を踏み出すための、大切な準備なのだと思います。
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参考:日本経済新聞「三菱電機、8000億円規模の事業撤退も」、Business Insider Japan、ITmedia MONOist、日本経済新聞「京セラ、不採算事業売却」「上場廃止124社で2年連続最多」ほか

※ 投資・法務・税務の具体的な判断については、必ず専門家にご相談ください。 株式会社BELLETは、本コンテンツの利用によって生じたいかなる損害についても責任を負いません。

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