Vol.155事業撤退

セブン&アイ・三菱ケミカルに学ぶ「やめる勇気」|撤退を競争力に変える

2026年9月8日
3 min read
#事業撤退#選択と集中#セブン&アイ

運営:株式会社BELLET · 更新日:

EXIT
Letters by BELLET

セブン&アイ・三菱ケミカルに学ぶ「やめる勇気」をめぐる事業の見直しを題材に、「撤退」と聞くと、どうしてもネガティブな響きを感じてしまうもの。けれど、本当に強い会社は「始める」のと同。撤退・売却の背景と経営資源の再配分を整理し、変化の兆しを捉えて次の成長へつなげる視点を考えます。

> 「撤退」と聞くと、どうしてもネガティブな響きを感じてしまうもの。けれど、本当に強い会社は「始める」のと同じくらい、上手に「やめる」ことができます。今回は最近の事例をやわらかく振り返りながら、事業転換や撤退の意味を一緒に考えてみたいと思います。

1. 直近の事例を眺めてみる

ここ1〜2年、大企業による大きな「選択と集中」のニュースが続いています。
たとえば2025年9月、セブン&アイ・ホールディングスは、傘下でスーパーなどを束ねるヨークホールディングスを、投資ファンドのベインキャピタルへ総額約8,147億円で売却することを決めました。コンビニという本業に経営資源を集めるための、大きな決断です。
同じ2025年、三菱ケミカルグループも、製薬子会社である田辺三菱製薬を約5,100億円でベインキャピタルへ売却すると発表しました。化学という主戦場に立ち返る判断です。さらに素材メーカーのJSRは、体外診断事業を新会社へ切り出してトクヤマへ譲り、デジタルやライフサイエンスへ軸足を移しました。
スタートアップの世界では、もっと身軽な「ピボット(方向転換)」が日常的に起きています。古くはSNSからゲーム会社へと姿を変えたミクシィ、ゲーム開発から社内チャットツールへ転じたSlack——いずれも、最初の事業にこだわり続けていたら今の姿はなかったかもしれません。

2. なぜ、転換や撤退に至ったのか

こうした決断の背景には、いくつかの共通点があります。
ひとつは市場環境の変化です。SNSにグローバル大手が参入したり、素材や医薬の競争が激しくなったりと、「気づけば自社の強みが効きにくい場所になっていた」というケースは少なくありません。
もうひとつは、リソースの有限さです。ヒト・モノ・カネ・時間は限られています。あれもこれもと手を広げるほど、本来勝てる場所への投資が薄まってしまう。だからこそ「本業はどこか」を見極め、そこへ集中するために他を手放す、という判断が生まれます。
そして見落とされがちなのが、内部要因です。事業への思い入れが強いほど「もう少し頑張れば」という心理が働き、判断が遅れがちになります。だからこそ多くの企業は、感情ではなく数字で見極められるよう、あらかじめ撤退基準(売上や黒字化までの期限など)を決めておくのです。

3. どうすればよかったか、を考えてみる

後から振り返ると、たいていの場合、早い段階で小さなシグナルは出ているものです。顧客が思ったように増えない、想定した課題が実は深刻ではなかった、競合が一気に値下げしてきた——そうした「予兆」を、定点観測のように見ておけたかどうか。
また、「続けるか、やめるか」の二択だけで考えないことも大切です。事業そのものは惜しくても、顧客が抱える本当の課題に立ち返れば、提供の仕方を変えるだけで届く道(=ピボット)が見えることがあります。Slackがまさにそうでした。
そしてもし手放すなら、ゼロにするのではなく、M&Aや事業譲渡で「次の担い手」に託すという選択肢もあります。今回のセブン&アイや三菱ケミカルのように、売却で得た資金と人材を本業へ回せば、撤退は次の成長の原資にもなり得るのです。

4. これからの道筋と、ちいさな教訓

日本では今、経営者の高齢化にともなう事業承継の問題(いわゆる「2025年問題」)も大きなテーマになっています。誰かに引き継ぐにせよ、たたむにせよ、「いつ・どんな状態で手放すか」を前もって考えておくことの重要性は、規模を問わず増しています。
最後にお伝えしたいのは、撤退は決して恥ではない、ということです。むしろ、限られた力を一番輝く場所へ向け直すための、前向きで戦略的な一手です。やめる判断ができる会社は、また新しく始めることもできます。
撤退や転換は「失敗の証」ではなく、「次の挑戦の入り口」。そう捉え直せたとき、私たちの選択肢はぐっと広がるはずです。今日の決断が、明日のどんな一歩につながるか——そんな視点で、自社の事業を眺めてみるのはいかがでしょうか。
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参考:セブン&アイによるヨークHD売却(2025年9月)、三菱ケミカルによる田辺三菱製薬売却(2025年)、JSRの体外診断事業譲渡、ミクシィ・Slack等のピボット事例、中小企業の事業承継『2025年問題』に関する各種報道より。

※ 投資・法務・税務の具体的な判断については、必ず専門家にご相談ください。 株式会社BELLETは、本コンテンツの利用によって生じたいかなる損害についても責任を負いません。

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